2023年度、介護職員の数が介護保険制度の開始以来、初めて減少に転じました。前年度から約2.9万人が減り、約212.6万人に――。その一方で、2026年度に必要とされる介護職員数は約240万人。実に約27万人以上もの人材が不足する見通しです。
「スタッフの負担が限界で、離職が止まらない」「業務効率化に取り組みたいが、テクノロジー導入の費用が捻出できない」。そんな声が全国の介護事業所から寄せられています。
そこで注目されているのが、国の「介護テクノロジー導入支援事業」です。地域医療介護総合確保基金を財源に、介護ロボットやICT機器の導入費用を最大補助率3/4で支援するこの制度は、令和8年度も継続して実施されます。この記事では、制度の補助内容・対象機器・申請要件・手続きの流れまでをわかりやすく解説します。
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この記事の目次
介護現場が直面する人手不足と生産性向上の課題
厚生労働省の推計では、2040年度には約57万人の介護職員が不足するとされており、もはや「人を増やす」だけで解決できる問題ではありません。
介護現場では、紙ベースの記録管理や口頭での情報伝達が業務を非効率にし、職員の負担増と離職率上昇を招いています。利用者と向き合う時間を削られ続ける疲弊感が、さらなる人材流出につながる悪循環です。
こうした現状に対し、国は令和6年度の介護報酬改定でICT・介護ロボット活用施設への人員配置基準の緩和を導入するなど、テクノロジーによる生産性向上を重点施策に位置づけています。テクノロジーの活用は、介護事業を持続させるための「必須の経営戦略」になりつつあります。

介護テクノロジー導入支援事業とは?
介護テクノロジー導入支援事業は、地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)を財源として実施される国の補助事業です。令和8年度の概算要求額は97億円の内数が計上されています。・正式名称:介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分))
・財源:地域医療介護総合確保基金
・令和8年度概算要求額:97億円の内数
・実施主体:都道府県(国が基金の2/3を負担)
・補助率:最大3/4(要件充足時)、1/2(その他)
令和7年度から、それまで別々に運用されていた「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」が一本化され、現在の名称に再編されました。これにより、介護ロボットとICT機器を組み合わせたパッケージ型の導入がより柔軟に支援されるようになっています。
実施の流れとしては、国から各都道府県に基金が交付され、都道府県が介護施設等に対して一部助成を行う仕組みです。過去の実績を見ると、介護ロボット導入支援事業の採択件数は令和元年度の1,813件から令和4年度の2,930件へと着実に増加しており、制度への注目度の高さがうかがえます。
介護テクノロジー(機器導入)の補助内容
本事業では、「介護テクノロジー利用の重点分野」として定められた9分野16項目に該当する機器が、カタログ方式により補助対象に選定されます。移乗支援、移動支援、排泄支援、見守り・コミュニケーション、入浴支援、介護業務支援など、幅広い分野の機器が対象です。
介護業務支援を除く介護テクノロジーの補助上限額は、区分ごとに以下のとおり設定されています。
| 区分 | 1台あたり補助上限額 | 補助台数 |
|---|---|---|
| 職員支援(移乗支援・見守り等) | 上限100万円 | 必要台数 |
| 入浴支援 | 上限30万円 | 必要台数 |
| 上記以外 | 上限30万円 | 必要台数 |
さらに、事業所全体の補助上限額は職員規模に応じて設定されています。
| 職員規模 | 補助上限額 |
|---|---|
| 1〜10人 | 100万円 |
| 11〜20人 | 250万円 |
| 21〜30人 | 250万円 |
| 31人〜 | 250万円 |
パッケージ型導入の補助内容
パッケージ型導入は、「介護業務支援」に該当するテクノロジー(介護記録ソフト等)と、それに連動することで効果が高まるテクノロジー(見守りセンサー・インカム等)をセットで導入する場合に利用できる区分です。
上限400万円〜1,000万円(事業所規模に応じて設定)
補助台数:必要台数
単体の機器導入と比べて大幅に手厚い支援を受けられるため、複数のテクノロジーを組み合わせた総合的な業務改善を検討している事業所には、特に活用メリットの大きい区分といえるでしょう。たとえば、介護記録ソフトの導入と同時に見守りセンサーやインカムを整備することで、記録の自動化と情報共有の迅速化を一度に実現できます。
補助率の仕組み
本事業の補助率は、「3/4を下限に各都道府県が設定した率」「1/2を下限に各都道府県が設定した率」の2段階に分かれています。
| 補助率 | 条件 |
|---|---|
| 3/4を下限 | 所定の要件をすべて満たす場合 |
| 1/2を下限 | 上記以外の場合 |
3/4と1/2では、導入費用に対する自己負担額に大きな差が出ます。たとえばパッケージ型で800万円の導入を行う場合、補助率3/4なら自己負担は200万円ですが、1/2の場合は400万円に。
自己負担額に200万円もの差が生じるのです。次のセクションで、3/4の補助率を適用するための要件を詳しく確認していきましょう。
補助率3/4を満たすための申請要件
補助率3/4の適用を受けるには、共通要件に加え、事業所の種別に応じた追加要件を満たす必要があります。ここでは要件を整理して解説します。
なお、本制度は都道府県を通じて申請する仕組みのため、地域によって運用や申請方法の細かい点が異なる場合があります。申請にあたっては、最新の公募要領を事前に確認しておくと安心です。
介護テクノロジー(機器導入)の要件
介護テクノロジー(機器導入)では、まず「共通要件」が定められており、加えて「入所・泊まり・居住系」「在宅系」の要件を満たす必要があります。詳しくは以下のとおりです。
| 共通要件 |
|---|
| ・職場環境の改善を図り、収支が改善がされた場合、職員賃金へ還元することを導入効果報告に明記 ・従前の介護職員等の人員体制の効率化を行うこと ・利用者のケアの質の維持・向上や職員の負担軽減に資する取組を行うことを予定していること |
| 入所・泊まり・居住系 |
| ・利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会を設置すること |
| 在宅系 |
| ・令和8年度内にケアプランデータ連携システムまたは同等のシステムを利用すること |
パッケージ型導入の要件
パッケージ型導入も、介護テクノロジーと同様に「共通要件」が定められており、加えて「入所・泊まり・居住系」「在宅系」の要件を満たす必要があります。
| 共通要件 |
|---|
| ・従業員がデジタル中核人材養成研修を受講していること |
| 入所・泊まり・居住系 |
| ・見守り、インカム・スマートフォン等のICT機器、介護記録ソフトの3点を活用すること |
| 在宅系 |
| ・令和8年度内にケアプランデータ連携システムまたは同等のシステムを利用することにより5事業所以上とデータ連携を行うこと |
その他の補助要件(補助率に関わらず共通)
補助率の区分に関わらず、本事業を利用するすべての事業所に以下の要件が課されます。
・介護ロボット等のパッケージ導入モデルや生産性向上ガイドラインを参考に、課題を抽出し、生産性向上に資する業務改善計画を提出すること
・一定の期間、効果を確認できるまで報告を行うこと
・第三者による業務改善支援または研修・相談等による支援を受けること
・介護情報基盤の利用準備を整えること
第三者による業務改善支援が求められている点は見落としがちです。外部の専門家やコンサルタント、研修機関のサポートを受けることが要件に含まれていますので、申請準備の段階で支援先を確保しておくことが重要です。
申請スケジュールと手続きの流れ
本事業は、各都道府県が独自に公募・審査を行うため、申請の時期や方法は都道府県ごとに異なります。一般的な手続きの流れは以下のとおりです。
| ステップ | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| ①情報収集 | 都道府県の公募情報を確認 | 自治体HPをこまめにチェック |
| ②書類準備 | 業務改善計画・見積書等の作成 | 第三者支援の確保も並行して進める |
| ③申請 | 都道府県の窓口へ申請 | 公募期間内に提出 |
| ④交付決定 | 審査を経て補助金の交付が決定 | 交付決定前の購入は補助対象外 |
| ⑤導入・運用 | テクノロジーの導入と運用開始 | 計画に沿って実施 |
| ⑥実績報告 | 導入効果の報告・検証 | 賃金還元状況の報告含む |
交付決定前に購入した機器は補助対象外となります。必ず交付決定を受けてから導入を進めてください。
令和8年度の公募は、多くの都道府県で2026年4月以降に順次開始される見込みです。人気の高い事業のため、公募期間が短い自治体もあります。お住まいの都道府県の担当窓口や公式サイトを定期的に確認し、早めに準備を始めることをおすすめします。
介護テクノロジー導入支援事業に関するよくある質問
介護テクノロジー導入支援事業はどこに申請すればよいですか?
本事業は各都道府県が実施主体となっています。事業所が所在する都道府県の介護・高齢者福祉担当部局に申請してください。公募情報は各都道府県のホームページに掲載されます。
介護ロボット導入支援事業やICT導入支援事業とは何が違うのですか?
令和7年度から、それまで別々に実施されていた「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」が一本化され、「介護テクノロジー導入支援事業」に再編されました。パッケージ型導入など、複数のテクノロジーを組み合わせた支援がより柔軟になっています。
カタログ方式とは何ですか?
補助対象となる機器をあらかじめカタログとしてリスト化し、そのカタログに掲載されている製品のみを補助対象とする方式です。導入を検討する際は、対象機器がカタログに掲載されているかを事前に確認してください。
パッケージ型導入と通常の機器導入はどちらを選べばよいですか?
パッケージ型は、介護記録ソフトと連動する機器(見守りセンサー・インカム等)を一括で導入する場合に適しています。補助上限額が最大1,000万円と手厚いため、総合的な業務改善を目指す事業所にはパッケージ型がおすすめです。一方、特定の機器を1〜2台導入したい場合は通常の機器導入が適しています。
補助率3/4を受けるための要件が満たせない場合はどうなりますか?
3/4の要件を満たせない場合でも、補助率1/2での支援を受けることが可能です。まずは1/2の補助率で導入を開始し、次年度以降にケアプランデータ連携や委員会設置などの要件を整備していく方法も考えられます。
見守りセンサーやインカムは単体でも補助対象になりますか?
はい、「介護テクノロジー利用の重点分野」に該当する機器であれば、カタログに掲載されていることを条件に単体でも補助対象になります。見守りセンサーは「見守り・コミュニケーション」分野、インカムはICT機器として補助対象となる場合があります。
交付決定前に機器を購入してしまった場合はどうなりますか?
交付決定前に購入した機器は補助対象外です。必ず都道府県からの交付決定通知を受けてから、機器の発注・購入を行ってください。
デジタル中核人材養成研修とは何ですか?
介護現場でのテクノロジー活用を推進するリーダーを育成するための研修です。在宅系の事業所で補助率3/4の適用を受けるためには、この研修の受講が要件のひとつとなっています。研修の実施時期や申込方法は各地域で異なります。
第三者による業務改善支援は具体的にどのようなものですか?
外部の専門家やコンサルタント、研修機関などによる業務改善の支援を指します。テクノロジー導入に伴う業務フローの見直しや、導入効果を最大化するための助言・研修などが含まれます。この支援にかかる経費も本事業の補助対象となっています。
令和8年度の公募はいつ頃始まりますか?
各都道府県によって異なりますが、多くの自治体で2026年4月以降に順次公募が開始される見込みです。一部の自治体では年度途中に追加公募を行う場合もあります。お住まいの都道府県の公式サイトを定期的にチェックすることをおすすめします。
まとめ
介護テクノロジー導入支援事業は、介護ロボットやICT機器の導入費用を最大補助率3/4で支援する制度です。令和7年度からの一本化により、パッケージ型導入で最大1,000万円の補助を受けられるなど、支援の幅が広がっています。
人手不足が深刻化するなか、テクノロジーの活用による業務効率化と介護サービスの質の向上は、介護事業を持続的に運営していくうえで欠かせない取り組みです。本事業を上手に活用し、職員の負担軽減と利用者へのケア充実の両立を目指してみてはいかがでしょうか。
公募時期は都道府県ごとに異なるため、早めの情報収集と準備がカギとなります。まずはお住まいの自治体の公募情報を確認するところから始めてみてください。
出典:令和8年度概算要求額 介護テクノロジー導入支援事業(49ページ)
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