
日本では年間約472万トンの食品が廃棄されている一方で、経済的な理由で食事に困る人々が増加しています。厚生労働省の「国民生活基礎調査(2022年)」によると、9人に1人の子どもが貧困により十分な食事を取れない状況にあることが明らかになっています。
このような食品ロスと食料不足の問題を解決する手段として、いまフードバンクが注目を集めています。
本記事では、フードバンクの仕組みやその意義、そして私たちにできる支援方法について解説します。
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この記事の目次
フードバンクとは?仕組みと役割
フードバンクはまだ食べられる状態にもかかわらず廃棄される食品を、企業や個人から無償で提供してもらい、必要としている人々や福祉施設などへ届ける活動です。
フードバンクの仕組み
フードバンクは食品の提供者から食品を受取り、保管し、必要な人に配布するという流れで成り立っています。まずは食品メーカーや小売店、農家などから、包装の印字ミスや規格外品、賞味期限が近いなどの理由で市場での販売が難しい食品を受け取ります。これらの食品はフードバンク団体によって適切な品質管理のもと保管され、支援を必要とする福祉施設や生活困窮世帯へと届けられます。
出典:一般社団法人全国フードバンク推進協議会
1967年にアメリカで開始されたフードバンクは、現在は200以上の団体が取り組んでいます。日本では2000年以降、フードバンクが設立され始めましたが、「食品ロス問題」や「貧困問題」への認識が十分に浸透していないこともあり、その活動はまだ広く認知されているとは言い難いのが現状です。
フードバンクの役割
フードバンクの重要性は、年々増しています。新型コロナ禍においては生活に困窮する世帯が増加し、セーフティネットとしての機能にも関心が集まりました。
取り扱われる食品の種類は多岐にわたります。コメや缶詰などの保存食品から、野菜や果物などの生鮮食品も対象です。ただし賞味期限切れの食品や開封された食品は扱わないなど、安全性を重視した厳格な基準が設けられています。また提供された食品が適切に活用されるよう、転売や不適切な利用を防ぐための管理体制も整備されています。
こうした取組は、食品を受け取る側だけでなく、提供する企業などにもメリットがあります。日本での小卸売り業界では、「3分1ルール」が慣例として取り入れられてきました。これは卸売り業者を通じてメーカーから小売業者に納入されるまでの期限を、製造日から賞味期限までの期間の3分の1までとするルールです。この期限を過ぎると店頭から撤去され、返品や廃棄されます。
この期限は世界的に見ても短く、日本の食品ロスを増やす原因のひとつとされています。フードバンクに食品を提供することで、「食べられるのに廃棄せざるを得ない食品」を減らせるのです。
またフードバンクは、地域との連携や子どもの成長支援を通じて、社会全体を支える役割も担っています。フードバンクは社会的な課題に重層的にアプローチする、重要な活動なのです。
フードバンクの地域での取り組み事例
フードバンク団体は、実際にはどんな活動をしているのでしょうか。ここでは東京都と麻生のフードバンクの取組を見ていきましょう。
東京都のフードバンク一覧
東京都では、フードバンク団体の連絡先などの情報を公表しています。TOKYOサーキュラーエコノミーアクションのサイトでは、2025年2月19日現在で、20の団体が掲載されています。
各団体の活動事例を、いくつかまとめました。
■あおぞらみんな食堂みんなカフェ(フードバンク昭島)
あおぞらみんな食堂は地域の居場所(みんなカフェ)として、昭島市社会福祉協議会のサロン活動に登録されています。
また「フードバンク昭島猫の手班」では、スタッフ会議と交流、ソーシャルイノベーションについて学ぶ会を毎月開催中です。
■一般社団法人OSUSOWAKE(おすそわけ)
東京都のおすそわけネットワークとして、こども家庭と地域のつながりを応援する活動です。登録されている食品や子供食堂から、受け取りたい人が欲しいものを選んで申し込む仕組みです。
■NPO法人フードバンクTAMA
地元に根差したフードバンク活動を行う団体です。企業・団体または家庭から支援された食品を、必要な人に届けます。
「未来を担う子どもたちのための支援」と「地域密着型の活動」に特化したフードバンクです。
支援対象や取組の目的も、団体ごとに異なります。迷ったときは、まずは問い合わせてみてください。
(参考:東京都環境公社)
フードバンク麻布の取り組み
フードバンク麻布は、食品提供を通じた社会貢献を行うフードバンク団体です。東京都港区麻布台を拠点に、食品を収集しています。
地域やコミュニティの中で食べきれない食品や災害備蓄食品、規格外の食品等を集め、困窮者支援団体へ届ける団体です。
なおフードバンク団体麻生では、個人に対して食品の配布は行っていません。都内フードバンク等の団体を通じて生活困窮者に届ける仕組みです。
(参考:フードバンク麻布)
フードバンクを支える取り組みと私たちができること
国や自治体、民間企業でも、フードバンクを支えるさまざまな取組が実施されています。またわたしたち一人ひとりの意識や行動の変化も重要です。
フードバンクを支える政府・企業の取組や、わたしたちにできることを見ていきましょう。
政府・企業の取り組み
農林水産省では、食品ロス削減を図る一つの手段としてフードバンク活動を支援しています。国内でフードバンク活動を行っている団体の実態調査を行うほか、令和6年12月25日には「食品寄附ガイドライン~食品寄附の信頼性向上に向けて~」を公表しました。
また東京都の「小売ロス削減総合対策補助金」をはじめ、食品ロスに取り組み企業や団体を支援する制度も設置されています。
【関連記事】中小小売事業者が取り組む食品ロス対策費用を最大1500万円補助する「小売ロス削減総合対策補助金」【東京都】
民間企業では、食品メーカーや小売業を中心に、フードバンクへの食品提供を事業活動の一部として組み込む動きも広がっています。製造過程で発生する規格外品や、販売期限が近づいた商品を定期的に提供するなど、継続的な支援体制を構築する企業が増えているのです。
最近では、賞味期限切れ(期限間近)食品を扱うスーパーも出てきました。賞味期限が近くなった食品の値引きや、生産者と連携して不適格となった商品や余剰食品の活用にも力を入れています。
食品ロスをなくし、必要な人に届ける取組は、社会全体に広がりつつあるのです。
私たちができる支援方法
個人でも、フードバンクの活動を支援する方法があります。食品の寄付もそのひとつです。家庭で余っている未開封の食品や、引っ越しの際に処分を考えている食品などを、フードバンク団体に寄付することができます。特に缶詰やレトルト食品、乾麺など、常温で保存可能な食品は重宝されています。
また、ボランティアとして活動に参加することも可能です。食品の仕分けや配送、事務作業など、多くのフードバンクでは運営に人手が足りていません。定期的なボランティアはもちろん、空いた時間を活用した単発的な参加も歓迎されることがあります。まずは近くの団体に問い合わせてみましょう。
さらに金銭的な支援も大きな支えとなります。多くのフードバンク団体は、寄付金を募って活動を維持しています。運営費用や倉庫の維持費、配送費用など、食品以外にもさまざまな経費が必要です。継続的な金銭的支援は活動の安定化に大きく貢献します。
もちろん、フードバンク活動の意義を周囲に伝え、理解と支援の輪を広げていくことも、わたしたちにできる重要な活動です。まずはできることから、身近な活動から、取り組んでいきましょう。
まとめ
フードバンクは食品ロスの削減と生活支援という社会課題の解決に向けた取組として、着実に社会に根付きつつあります。政府による支援体制の整備や、企業の積極的な参画によって、活動の基盤は年々強化されています。
しかしフードバンクの活動を持続可能なものとしていくためには、より多くの人々の理解と支援が必要です。食品の寄付やボランティア参加など、わたしたちができることもたくさんあります。
フードバンク活動は、食品を介して人と人とがつながり、支え合う新しい形の社会貢献です。まずはできることから、始めてみましょう。
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