政府はこれまでの地方創生の取り組みを見直し、新たな施策として「地方創生2.0」を打ち出しました。その実現に向けた具体的な支援策として、従来の「デジタル田園都市国家構想交付金」を発展させた「新しい地方経済・生活環境創生交付金(第2世代交付金)」が創設されます。
今回は地方の自主的な取り組みを後押しする「新しい地方経済・生活環境創生交付金(第2世代交付金)」の概要や、これまでのデジタル田園都市国家構想交付金」の内容をまとめました。
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この記事の目次
これまでの地方創生の成果と課題
2014年から始まった地方創生政策は、政府関係機関の地方移転や地方創生交付金の活用などにより、全国各地でさまざまな活動を行ってきました。しかしこれらの事例は、まだまだ広く普及したとは言えません。人口減少や東京圏への一極集中という根本的な課題は、今日も顕在しています。
「地方創生 2.0 の『基本的な考え方』 」では、特に若者や女性にとって魅力的な仕事や職場が地方に不足していることや、人口減少がもたらす影響への認識が十分に浸透しなかったことが課題として指摘されました。また省庁間や自治体部局間の縦割り構造を背景に、情報やデータ、政策の連携が不十分だったことも挙げられています。
こうした点を踏まえ、地域再生2.0は、多様な幸せを実現するための社会政策として位置付けられています。
「地方創生2.0」の概要
新たに策定された地方創生2.0では、5つの基本方針が示されました。
①安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生 |
■楽しく働き、楽しく暮らせる場所として、「若者・女性にも選ばれる地方(=楽しい地方)」をつくる |
■地域のコミュニティや日常生活に不可欠なサービスを維持する |
■事前防災、危機管理に取り組む |
②東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散 |
■企業や大学の地方分散や政府機関等の移転などに取り組む |
■地方への移住や企業移転、関係人口の増加など人の流れを創り、東京圏への過度な一極集中の弊害を是正する |
③付加価値創出型の新しい地方経済の創生 |
■自然や文化・芸術など地域資源を最大限活用した高付加価値型の産業・事業を創出する。 |
■内外から地方への投融資を促進する |
■地方起点で成長し、ヒト・モノ・金・情報の流れをつくるエコシステムを形成する |
④デジタル・新技術の徹底活用 |
■地方におけるデジタルライフラインやサイバーセキュリティを含むデジタル基盤の構築を支援し、生活環境の改善につなげる |
■デジタル技術の活用や地方の課題を起点とする規制・制度改革を進める |
⑤「産官学金労言」の連携など、国民的な機運の向上 |
■地域で知恵を出し合い、行動を起こすための合意形成に努める取組を進める |
■人材をシェアする流れをつくる |
そのほか地域創生2.0の全体像は、以下の図も参照してください。
出典:内閣府 新しい地方経済・生活環境創生交付金について
デジタル田園都市国家構想交付金から、新しい地方経済・生活環境創生交付金へ
令和6年度補正予算ではデジタル田園都市国家構想交付金の名称が変更され、「新しい地方経済・生活環境創生交付金」として通知されました。ここでは地方創生2.0の「新しい地方経済・生活環境創生交付金」の内容を見ていきましょう。
新しい地方経済・生活環境創生交付金(第2世代交付金)の概要
令和6年度補正予算では、「新しい地方経済・生活環境創生交付金」の創設に向けて、1000億円の追加額が示されました。
「新しい地方経済・生活環境創生交付金」では、以下の取組が支援されます。
■地方公共団体の自主性と創意工夫に基づき、産官学金労言における議論を踏まえた地域の独自の取組など |
■デジタル技術を活用した地域の課題解決や魅力向上に資する取組 |
■デジタル技術を複数の地方公共団体で共同利用し、社会課題の解決に積極的に活用する取組 |
■地方公共団体の先進的な防災の取組 |
■半導体等の戦略分野における国家プロジェクトの産業拠点整備等に必要となる関連インフラの整備 |
令和6年12月27日には、第73回 地域再生計画の認定申請に係る事前相談及び認定申請受付についての事務連絡が発出されています。
新しい地方経済・生活環境創生交付金(第2世代交付金)を活用する事業に係る地域再生計画の認定申請も、第73回地域再生計画認定分として、受付が行われます。
【第73回】 地域再生計画の認定申請 受け付け | |
事前相談 | 令和6年12月27日(金)から令和7年1月10日(金)まで |
認定申請 | 令和7年1月27日(月)から令和7年1月29日(水)まで |
認定 | 令和7年3月下旬を予定 |
参考:第73回地域再生計画の認定申請に係る事前相談及び認定申請受付について
参考:新しい地方経済・生活環境創生交付金(第2世代交付金)を活用する事業に係る地域再生計画の認定申請受付について(第73回地域再生計画認定申請受付)
デジタル田園都市国家構想交付金について
「新しい地方経済・生活環境創生交付金」は旧制度である「デジタル田園都市国家構想交付金」を拡充したものです。ここでは地方創生の交付金の参考として、「デジタル田園都市国家構想交付金」の内容を見ていきましょう。
【デジタル田園都市国家構想交付金の全体像】
「デジタル田園都市国家構想交付金」は、デジタル田園都市国家構想の実現による地方の社会課題解決・魅力向上の取組を加速化・深化するために設立されました。各地方公共団体の意欲的な取組等を支援します。
本交付金では、大きく4つのタイプが設定されています。
・地方創生推進タイプ
・地方創生拠点整備タイプ
・地域産業構造転換インフラ整備推進タイプ
デジタル実装タイプ
デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上の実現に向けた地方公共団体の取組を支援します。以下の5つのタイプに区分されます。
■TYPE1 優良モデル導入支援型 |
他の地域等で既に確立されている優良なモデル・サービスを活用して、迅速に横展開する取組(補助率1/2) |
■TYPE2 データ連携基盤活用型 |
データ連携基盤を活用して複数のサービス実装を伴う、モデルケースとなり得る取組(補助率1/2) |
■TYPE3 デジタル社会変革型 |
(TYPE2の要件を満たす)デジタル社会変革による地域の暮らしの維持につながり、かつ総合評価が優れている取組(補助率2/3) |
■TYPE S デジタル行財政改革先行挑戦型 |
将来的に国や地方の統一的・標準的なデジタル基盤への横展開につながる見込みのある、地方自治体の先行モデル的な取組(補助率3/4) |
■デジタル実装タイプ 地方創生テレワーク型 |
「転職なき移住」を実現するため、サテライトオフィスの整備・利用促進等に取り組む地方公共団体を支援(補助率2/3など) |
地方創生推進タイプ
観光や農林水産業の振興等の地方創生に資する取組などを支援します。補助率はいずれも1/2です。
■先駆型 |
先駆性の高い最長5年間の事業 |
■横展開型 |
先駆的・優良事例の横展開を図る最長3年間の事業 万博の開催を契機として実施する地方創生に資する事業 |
■Society5.0型 |
未来技術を活用した新たな社会システムづくりのモデルとなる、最長5年間の事業 |
地方創生拠点整備タイプ
観光や農林水産業の振興等の地方創生に資する拠点施設の整備などを支援します。補助率は1/2です。
地域産業構造転換インフラ整備推進タイプ
産業構造転換の加速化に資する半導体等の大規模な生産拠点整備について、関連インフラの整備を機動的かつ追加的に支援します。
関係地方公共団体からの提出のあった実施計画に基づいて、予算が配分されています。
制度の流れ
「デジタル田園都市国家構想交付金」では、タイプごとに各種手続きの締め切りが異なりました。主な流れは以下のとおりです。
①事務連絡
②実施計画等の提出〆切
➂採択結果の公表
④交付決定
過去の募集スケジュールになりますが、令和6年度のスケジュール(第1回・第2回)については、以下の図を参照してください。
出典:内閣府 デジタル田園都市国家構想交付金について
まとめ
地方創生2.0は単なる地域活性化策を超えて、日本全体の経済・社会政策として位置づけられています。新設される第2世代交付金は地方公共団体の自主性と創意工夫を重視し、デジタル技術の活用や産官学金労言の連携強化など、より包括的な地域づくりが支援対象となりました。
若者や女性にとって魅力的な職場づくりや地域間格差の是正、防災対策の強化などの施策は、社会的にも大きな関心が寄せられている項目です。政策の方向性を確認し、支援を上手に活用しながら、今後のビジネス展開に役立てていきましょう。
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