IT導入補助金は、業務効率化やDXのために中小企業などが、ITツールを導入する際のコストを支援する補助金制度のことです。2024年からは区分や補助率、補助対象となるITツールなどが変更となるため事前にチェックしておきましょう。
この記事では、2024年版のIT導入補助金の中から「IT導入支援事業者(ツール導入や申請サポートなどを事業者」の移行手続きなどにフォーカスを当てて解説していきます。
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この記事の目次
IT導入補助金2024の目的と概要
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的とした補助金制度です。業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェアやサービスなど)の導入を支援します。対象となるITツールは、原則として事前に事務局の審査を受け補助金HPに公開(登録)されているものです。相談対応等のサポート費用やクラウドサービス利用料等も補助対象に含まれます。
補助金申請者(中小企業・小規模事業者等)は、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んでの申請が必要です。
IT導入補助金2024の対象者
以下に該当する中小企業(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業、製造業、建設業等も対象)および小規模事業者が対象
〜資本金あるいは従業員数の一方が記載内容以下の場合に対象(個人事業を含む)〜
業種・組織形態 | 資本金額あるいは出資総額 | 常勤の従業員数 |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億人 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万人 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車や航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業あるいは情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
医療法人、社会福祉法人、学校法人 | ー | 300人 |
商工会・都道府県商工会連合会および商工会議所 | ー | 100人 |
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 | ー | 主たる業種に記載の従業員規模 |
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 | ー | 主たる業種に記載の従業員規模 |
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) | ー | 主たる業種に記載の従業員規模 |
〜小規模事業者〜
業種・組織形態 | 常勤の従業員数 |
商業・サービス業(宿泊業や娯楽業を除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業や娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
補助内容
・通常枠
「生産性向上に必要なITツールの導入費用」「最大2年分のクラウド利用料」「保守運用等の導入関連費用」を支援
・インボイス枠(インボイス対応類型)
インボイス制度への対応に特化した支援枠で、会計や受発注、決済ソフトに加えて、PCやタブレット、レジ、券売機等のハードウェア導入費用を支援。小規模事業者は最大4/5を補助し、補助下限は設けられておらず安価なITツール導入も対象
・インボイス枠(電子類型型)
取り引き関係における発注者が費用を負担してインボイス対応済み受発注ソフトを導入し、受注者である中小企業や小規模事業者等が無償で利用できるケースを支援
・複数社連携IT導入枠
10者以上の中小企業や小規模事業者等が連携した、インボイス対応への対応やキャッシュレス決済を導入する取り組み等を支援。連携に必要な事務費や専門家費も補助対象
・セキュリティ対策推進枠
独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているセキュリティサービスの利用料を支援
2023年から2024年への変更点
IT導入補助金2024年は2023年と以下の点が異なります。
(1)補助対象枠の変更
2023年 | 2024年 |
(1)通常枠 (2)セキュリティ対策推進枠 (3)デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・商流一括インボイス対応類型・複数社連携IT導入類型) |
(1)通常枠 (2)セキュリティ対策推進枠 (3)インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型) (4)複数社連携IT導入枠 |
2023年まで設けられていたデジタル化基盤導入枠に代わり、インボイス枠が導入されました。デジタル化基盤導入枠内のひとつであった複数社連携IT導入類型は、新たな枠として運用されます。
(2)補助率の拡大
新設された「インボイス枠内のインボイス対応類型」では、小規模事業者への補助率が一部「4/5」へ引き上げられます。中小企業への補助率は従来通り「3/4」です。
(3)制度変更に伴う補助対象ITツールの見直し
「インボイス枠内のインボイス対応類型」では、インボイス制度に対応した「会計・受発注・決済機能を持つソフトウェア」が補助対象となります。これに伴い、インボイス制度に対応していないソフトウェアおよびECサイト制作は対象外となります。
このように2024年のIT導入補助金は、2023年10月から運用されているインボイス制度を軸として枠や補助対象が変更されています。今後もインボイスの導入事業者が広がることを見越して制度設計されており、対象事業者をより強力にサポートする制度になったといえるでしょう。
IT導入支援事業者の役割とは
「IT導入支援事業者」とは、中小企業・小規模事業者等のツール導入や申請サポート、補助事業支援などを行う事業者のことです。「IT導入支援事業者が提供している」かつ「事務局に登録されたITツール」を中小企業等が導入する際に、IT導入補助金の支給対象となります。
具体的なIT導入支援事業者の定義は以下の通りです。
- 補助事業者のパートナーとして事業を実施している
- 補助事業者に対して、ITツールの説明や導入・運用方法の相談などのサポート、補助金の交付申請・実績報告等の事務局に提出する各種申請や手続きのサポートを行なっている
- 事務局、および外部審査委員会による審査を経て、採択されている
この補助金でITツールとして定義されるのは、「IT導入支援事業者が提供している」「事務局に事前登録されている」という条件を満たし、かつ、補助申請事業者の労働生産性向上に貢献するソフトウェアやオプション、役務、ハードウェアなどです。
なお、地域DXの実現を目指す「複数社連携IT導入類型」については、IT導入支援事業者およびITツールの事前登録は不要となっています。
上記を踏まえると、IT導入支援事業者の役割は以下のようになります。
- 補助申請事業者の生産性向上に役立つITツールを事務局に登録する
- 補助申請事業者に対して、適切なITツールの提案や導入、アフターサポートを行う
- 補助事業の円滑な推進をサポートする。例えば「申請者からの問い合わせや疑問に対し事務局の代わりに対応する」など
- 補助申請事業者による補助金不正受給等の不正行為を防止し適切に補助金が交付されるよう、補助事業の管理および監督を行う
このように「IT導入支援事業者」は、ITツールの提供だけでなく、導入後のサポートも含めて申請者と深く関わる役割を持っているとわかります。
IT導入支援事業者の移行登録は必要?
IT導入支援事業者情報およびITツール情報を登録済みのIT導入支援事業者は、「IT導入補助金2023後期事務局」で移行登録を行うことで、登録済みの情報を「IT導入補助金2024」で継続して交付申請に利用できます。
対象者が手続きを行わない場合、IT導入補助金2024へIT導入支援事業者情報・ITツール情報は引継がれません。IT導入支援事業者の移行登録を適切に実施することで、書類の準備やチェックに費やす手間を軽減できれば、捻出した時間を自社の新規顧客開拓や既存顧客へのフォローなどに充てることも可能です。
移行登録手続きの方法
移行登録全体の流れは、申請登録を行った時期によって異なります。前期事務局にて申請登録(~2023/7/10以前に申請登録)した方は次のSTEP1、2を行います。後期事務局にて申請登録(2023/8/1以降に申請登録)した方は、STEP2のみ行います。
2023前期から2023後期へ継続利用登録した方 | 2023後期から新規で登録申請した方 |
STEP1.事前確認の受付手続き ↓ STEP2.移行登録手続き |
※STEP1不要 STEP2.移行登録手続のみ |
STEP1とSTEP2の詳細はそれぞれ以下のとおりです。
STEP1.事前確認の受付手続き
【事前確認の受付手続き期間】
2024年1月15日まで *コンソーシアム(構成員)によるIT導入支援事業者情報は「2024年1月29日」が受付期限
【事前確認の受付手続き】
事前確認受付は「IT導入支援事業者ポータル」あるいは「構成員ポータル」から申請しましょう。
(1)IT導入支援事業者情報の移行登録に向けた事前確認手順
・IT導入支援事業者ポータルサイトにログインする
・IT導入支援事業者情報変更入力画面から必要な項目を入力する
・入力内容を確認する
・登録に際しての宣誓事項を確認して宣誓する
・事前確認の受付手続きを完了する
(2)ITツール情報の移行登録に向けた事前確認手順
・IT導入支援事業者ポータルサイトにログインする
・ITツール検索画面から、移行を希望するツールを検索する
・ITツール情報変更入力画面から必要な項目を入力して、受付手続きを行う
・入力内容を確認する
・事前確認の受付手続きを完了する
(3)コンソーシアム(構成員)の移行登録に向けた事前確認手順
・幹事社がIT事業者ポータルの構成員一覧において、変更申請を依頼したい構成員を検索する(幹事社)
・確認画面下部の「変更依頼」を押す(幹事社)
・構成員ポータルから「変更申請あり」を押す(構成員)
・情報変更する項目を入力し、幹事社へ承認を依頼する(構成員)
・IT事業者ポータルで構成員情報の変更内容を承認する(幹事社)
・事務局に申請内容が通知される
(4)申請時の必要書類
〜法人(単独コンソーシアム・幹事社コンソーシアム構成員の場合)〜
・履歴事項全部証明書(事前確認手続き申請日から3ヶ月以内に発行されているものに限る)
・法人税の納税証明書(一期の決算を迎えたうえで提出する)
〜個人事業主(コンソーシアム構成員)〜
・運転免許証(登録申請日が有効期限内)あるいは運転経歴証明書または住民票(事前確認手続き申請日から3ヶ月以内)
・所得税の納税証明書
・令和4年分の確定申告書(旧姓で事業を行っており3つの書類の姓名が不一致となる場合、姓名の変更がわかる書類を提出する)
(5)事前確認の受付手続きにおける入力項目
〜「法人単独」「コンソーシアム(幹事社)」の場合〜
出典:【IT導入支援事業者】移行登録のご案内
〜コンソーシアム(構成員)の場合〜
出典:【IT導入支援事業者】移行登録のご案内
STEP2.移行登録手続き
【移行登録手続き期間】
2024年2月16日以降開始予定 *詳細は決まり次第告示されます。
【移行登録時の注意点】
- 対象者が受付期間内に手続きを行わなかった場合、IT導入補助金2023で入力済みの登録内容はIT導入補助金2024の登録申請画面上に引き継がれるが、証憑類の提出および登録審査は必要です。
- ITツール情報に関する事前確認の受付については、各IT導入支援事業者(法人(単独)、コンソーシアム幹事社、コンソーシアム構成員)がそれぞれ手続きを行う必要があります
- IT導入支援事業者の登録形態がコンソーシアムの場合、幹事社となるIT導入支援事業者が事前確認受付を行います。幹事社が事前確認受付を実施しなかった場合、幹事社および同コンソーシアム内の構成員のIT導入支援事業者情報とITツール情報は引き継がれません。仮に構成員のみがIT導入支援事業者として事前確認受付手続きを行っても、幹事社にて事前確認の受付を実施しなければ情報は引き継がれないことになります
まとめ
IT導入支援事業者が、登録済みのITツールなどをIT導入補助金2024で引き続き使う場合は、移行手続きの実施をお勧めします。移行手続きをスムーズに実施できれば、自社の事務的な手間を削減できるためメリットは大きいでしょう。IT導入補助金2024開始直後は申請が集中し、事務局による確認に時間を要することも考えられます。移行登録に向けた事前確認が必要な場合は、期日までに手続きを進めるようにしてください。