
インバウンドをはじめとする観光需要の急速な回復にともない、宿泊業では人手不足が深刻化しています。今後更なる増加が見込まれる観光需要の取り込みとインバウンドによる経済効果を最大限にするためにも、受け皿となる宿泊業の人手不足の解消は急務です。
観光庁では「観光地・観光産業における人材不足対策事業」として、採用活動等の足下の対策、機械化・DX化推進のための設備投資支援等の短期的な対策、外国人材の活用等の中長期的な対策などの人手不足対策を総合的に実施しています。
今回は観光地・観光産業における人材不足対策事業の要件や申請方法をまとめました。
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この記事の目次
観光地・観光産業における人材不足対策事業とは
観光地・観光産業における人材不足対策事業は、以下の3つから成り立つ制度です。
①人材確保の促進 事業者の採用活動を全面的に促進 ②人材活用の高度化に向けた設備投資支援 サービス水準向上・賃上げを実現するため、スマートチェックイン・アウトや予約等管理システム(PMS)等の設備投資を支援 ③外国人材の確保 特定技能試験の受験者を増やすためのジョブフェア等のPR活動やマッチングイベントの実施、観光地における外国語対応人材の確保等 |
出典:観光庁
補助対象は①と③が民間事業者、②が宿泊事業者です。今回は宿泊事業者が対象となる、「人材活用の高度化に向けた設備投資支援」を中心に見ていきましょう。
事業のスケジュール
本事業は参加申し込みののち、事業計画書を提出して審査を受けます。事業全体の流れとスケジュールは、以下のとおりです。
①参加申込
令和7年3月24日(月)~令和7年5月23日(金)
Webサイトから参加申込してください。
②計画申請(事業計画の提出)
令和7年3月24日(月)~令和7年5月30日(金)
マイページにログインの後、計画申請フォームから計画申請(事業計画の提出)を行います。
③計画採択
申請者に審査結果が通知されます。採択となっても、この時点ではまだ補助事業に着手することができません。
④交付申請
遅くとも令和7年11月14日(金)まで
⑤交付決定
申請者に審査結果が通知されます。交付決定の通知を受けた補助事業者は、交付決定の通知を受けた後に補助事業を実施してください。
⑥補助事業実施
交付決定を受けた事業計画に基づき、補助事業を実施します。
⑦完了実績報告
令和8年1月9日締切
補助事業終了後、実績報告フォームから完了実績報告を行ってください。実施した補助事業の結果を報告するとともに、精算に係る書類を事務局に提出します。
⑧補助金請求書提出
令和8年2月6日締切
補助額の確定の通知を受け取った後、補助金請求書を提出してください。
⑨補助金交付
補助金請求書提出後約45日後
銀行振込にて、補助金が交付されます。
対象事業者
対象となるのは、旅館業法の許可を受けた宿泊事業者です。ただし、風俗営業者や住宅宿泊事業等は除きます。
そのほか、主な要件は以下のとおりです。
①以下のいずれかに該当すること ■宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインに基づく登録制度の登録を受けた、または同制度の登録申請をした ■有価証券報告書を内閣総理大臣に提出する会社またはその子会社および関連会社であり、観光施設における心のバリアフリー認定制度の認定を取得済みまたは1年以内に取得予定である ②地域と連携し、地域一体での求人活動等、人手不足解消のための取組を行っていること |
なお以下の場合は、補助対象外となります。
- 同一の事業内容で、国や地方公共団体の補助金等の給付を受けている
- 計画申請期間中において未開業である
- 計画申請時点で休業中であり、完了実績報告時までに営業を再開しない宿泊施設
- 計画申請時点で閉業の予定がある
- 計画申請時点で売却の予定がある
- 計画申請時点で営業許可の承継の予定がある
- その他、人手不足の解消が見込まれない宿泊施設 など
対象事業
本事業では宿泊業の人材不足解消に向け、設備投資などの効率化を通じて人材の効果的な配置とサービス水準向上を強化する取り組みが支援されます。限られた人材を最大限に活用し業務効率を高めることで、旅行者やビジネス客の方の満足度向上と業界の発展をサポートする制度です。
具体的には、以下の取組が対象となります。
■フロント業務 自動チェックイン機・無人化の為の機械導入 など ■予約・デスク業務 予約管理システムの導入、AI機器・設備の設置 など ■清掃業務 清掃ロボット等の購入、効率化を図る為の設備 など ■食事の準備・配膳 献立管理システムの導入、配膳ロボットの購入 など ■その他バックサポート業務 シフト管理システムの導入、インカム導入 など |
補助率・上限額
■補助率 1/2
■補助上限 500万円
対象経費
対象となるのは、以下の設備・システム等です。
①フロント業務 ・自動チェックイン機 ・スマートロック・カードロック ・施設内情報表示システム ・翻訳、通訳システム ・POSレジ ・電子宿帳システム ・キャッシュレス決済端末 |
②予約・デスク業務 ・PMS ・宿泊予約システム ・サイトコントローラー ・チャットボット ・SMS送信サービス ・レベニューマネジメント ・会計ソフト |
③清掃業務 ・清掃ロボット ・コンドルポリシャー(床洗浄機) ・清掃管理システム ・オゾン脱臭機 |
④バックサポート業務 ・インカム、無線通信機 ・監視カメラ ・温度管理システム ・ビジネス電話システム ・混雑状況可視化システム ・労務管理システム ・在庫管理システム |
⑤食事の準備 ・スチームコンベクション ・オーブン ・オーダーシステム ・冷凍庫 ・真空包装機 ・配膳ロボット ・小荷物専用昇降機 など |
なお対象は、宿泊施設の運営における人手不足解消を目的とした設備・備品に限られます。
また「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」の補助対象者の要件を満たす中小企業等が補助事業者となる場合、同補助金の製品カタログに記載されている製品の製品本体価格および導入経費は補助対象外です。
申請について
計画申請書類はWebサイトの計画申請フォームから提出します。なお、やむを得ない理由によって計画申請フォームからの提出が困難な場合には、事前に事務局まで相談してください。公募期間や申請に必要な書類を確認していきましょう。
公募期間と必要書類
公募期間は、以下のとおりです。
令和7年3月24日(月)13:00~令和7年5月30日(金) 17:00締切
なお参加申込のアカウント発行は、5月23日(金)17時までです。計画申請の提出が5月30日(金)17時までとなります。
公募期間内に参加申込と計画申請の両方を完了している必要がありますので、注意してください。
【提出が必要な書類】
提出が必要な主な書類は、以下のとおりです。
- 設備等導入前の写真
- 旅館業法上の営業許可証の写し
- 見積書・相見積書
- 導入予定の設備等についてわかるカタログ等
そのほか、必要に応じて必要な書類が異なります。なお事業計画書は、計画申請フォームに直接入力してください。
採択事業者の選定
以下に該当する場合は、採択にあたり、優先されます。
①宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインに基づく登録制度において、「高付加価値経営旅館等」の登録を受けた、または同制度の登録申請をしている ②上記のうち、以下のいずれかを提出した(さらに優先的に採択されます) ■宿泊施設の損益管理実態が分かる資料 ■集客促進を目的とした顧客情報の管理や統計分析等を実施していることがわかる資料 |
提出資料に指定様式はありませんが、必ず公募要項のサンプルを確認してください。
まとめ
観光庁が設置した人材活用の高度化に向けた設備投資支援では、限られた人材を最大限に活用しながらサービス品質向上を目指す取組が支援されます。特に高付加価値経営旅館等の登録を受けた施設や、顧客情報管理を実施している事業者は優先的に採択される仕組みです。
人材不足の解消には、DX化や効率化による業務改革が欠かせません。人材活用の高度化に向けた設備投資支援をはじめとした支援制度を活用し、持続可能な宿泊業の運営体制の構築を目指しましょう。