市村清新技術財団では、中小企業の革新的な技術開発を最大2400万円支援する「新技術開発助成」を実施しています。これは「独創的な新技術の実用化」をねらいとしたもので、基本原理の確認が終了(研究段階終了)した後の実用化を目的にした開発試作が対象となります。
今回は「新技術開発助成」の各要件から申請手続き、過去の助成実績まで、詳しく解説していきます。
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この記事の目次
新技術開発助成とは
市村清新技術財団は、科学技術に関する独創的な研究や新技術の開発・実用化を支援し、産業や科学技術の新分野を創出することで、国民生活の向上に貢献することを目的としています。昭和43年の設立以来、この理念のもと、原則として年2回の助成を実施しています。
「新技術開発助成」の対象の要件や助成額について、みていきましょう。
助成対象の主な要件
対象となる企業と開発技術の主な要件は、以下のとおりです。
■企業要件 |
(1) 資本金3億円以下または従業員300名以下の非上場企業で、自ら技術開発する会社 |
(2) 関係会社に上場企業、大企業がないこと |
株式会社のほか、合名会社や合資会社、合同会社が対象となります。
■開発技術の要件 |
(1) 資本金3億円以下または従業員300名以下の非上場企業で、自ら技術開発する会社 |
(2) 関係会社に上場企業、大企業がないこと |
(3) 実用化の見込みがある技術であること |
(4)開発予定期間が、原則として1年以内であること |
(5)経済的効果や地球温暖化防止が大きく期待できること |
(6)産業の発展や公共の利益に寄与すること |
(7) 同じ技術開発内容で、他機関からの助成を受けていないこと |
なお、以下の場合は助成対象外です。
・医薬品およびソフトウエア製品の実用化開発
・国の承認審査のために必要な臨床試験段階の開発
・研究段階、商品設計段階、量産化段階の技術開発
ただし医療機器・器具は助成対象になります。
対象経費
主な対象経費は、以下のとおりです。
■部品・材料費 |
---|
開発に必要な部品・原材料購入費 |
■消耗品費 |
試作・評価に関わる消耗品費用 |
■外部委託費 |
開発活動の一部を外部に委託する費用 |
■レンタル費用 |
計測器等レンタル費用 |
なお社内人件費は、原則として助成対象外です。また、経費は助成期間中に発注し、当期間中に支払いが終了するものに限ります。
ただし以下の経費は対象外です。
・設備・備品費
・金型・LSI制作費
・社内人件費
・旅費交通費・宿泊費
・会議費
・印刷費
そのほか、家賃や光熱費なども対象にはなりません。
助成額
助成金額は以下のとおりです。
試作費合計額の4/5以下
なお上限は、2400万円です。契約通り実施されなかった場合や助成金が余った場合は、返還する必要があります。
申請手続き
それでは申請の手続きを見ていきましょう。募集案内は2月と8月に、関係機関に向けて行われます。また財団ホームページや日刊工業新聞、日経産業新聞等にも募集案内が掲載されます。
申請の前には、必ず詳細を確認してください。
受付期間
申請の受付期間は、以下のとおりです。
第115回 令和7年4月1日~4月20日 |
第116回 令和7年10月1日~10月20日 |
いずれも締切日消印有効です。
応募方法
応募には申請書類のWeb登録と、申請書類一式の提出が必要です。財団ホームページのWeb登録システムにてマイページを取得し、マイページにて申請書を作成します。
なおマイページは申請の種類、募集回ごとに取得が必要です。
そのほか、申請の流れは以下のとおりです。
①マイページから申請書を印刷し、申請書類を2セット作成する |
②同様に、マイページから申請書類チェックシートを印刷して、郵送物を確認しチェックシートと2セットをあわせて送付する |
Web登録システムに登録のみ、または申請書類一式の送付のみでは申請完了となりません。
必要書類
郵送にて提出が必要な主な書類は、以下のとおりです。
・申請書類チェックシート
・新技術開発助成申請書
・申請書の補足説明資料
・出願書類、公報、他社権利実施許諾、委譲の場合は契約書
・参考文献、新聞記事等の参考資料
・見積書
・申請会社の概要、会社経歴書
・申請会社の登記簿謄本
・直近3期の決算報告書
・直近決算期末の金融機関の残高証明書
・直近の税務申告書
・申請者(代表者)および開発責任者の履歴書
・説明場所案内図
マイページ取得期間
マイページ取得期間は、以下のとおりです。
第115回 令和7年2月1日~4月20日 |
第116回 令和7年8月1日~10月20日 |
なおマイページ取得開始日から、前述の受付開始までの間の期間は、マイページの取得、申請書の作成・保存のみが行えます。登録は行えませんので注意してください。
審査と助成金の支給スケジュール
助成金の交付は、審査にて決定します。審査結果は以下の日程にて発表されます。
第115回 令和7年7月下旬 |
第116回 令和7年1月下旬 |
審査後の流れや、事業の流れをみていきましょう。
審査後の流れ
審査結果は文書により通知されます。また助成テーマは、通知時期に合わせて、財団ホームページや日刊工業新聞、日経産業新聞等に掲載されます。
その後の流れは、以下のとおりです。
(1) 助成金の贈呈 |
---|
助成金贈呈式は、以下の時期に行われます。 第115回 令和7年8月初旬 第116回 令和8年2月初旬 |
(2)「助成契約書」の締結 |
助成対象者と財団は「助成契約書」を締結します。 |
(3) 各種報告を行う |
事業途中で中間報告書、完了時には完了報告書を提出します。 なお、完了認定調査の結果、技術仕様の達成度や経費管理が確認された場合には、新技術開発完了認定書が発行されます。 |
事業の流れ
助成事業の全体像は、以下の図を参照してください。
出典:新技術開発助成募集のご案内
主なステップは、以下のとおりです。
(1) 応募受付
(2) 各種審査
(3) 採否決定
(4) 開発実施計画書の提出
(5) 助成契約凍結・助成金支給
(6) 助成開始(事業開始)
(7) 中間報告・完了報告
(8) 完了
なお開発実施計画書は、申請書とほぼ同様の内容です。情報を更新するために、新規作成します。
助成実績の紹介
最後に、これまでの助成実績を見ていきましょう。第114回の新技術開発助成では、以下のような事業が対象となりました。
粉体及び高粘度液体/ペーストの秤量装置開発
食品、サプリメント、医薬品、化粧品などの定量分析においては、サンプルとなる粉体および高粘度液体/ペーストの高精度な秤量と前処理の自動化が重要性を増しています。本新技術開発では、さまざまな高粘度液体/ペーストや粉体に対して、定量分析に至る高精度秤量ならびに前処理を自動化する独自装置開発を行いました。
製品の安全性確保や有効成分の検定が効率化されるだけでなく、材料ロスや消費電力の削減への貢献が期待されています。
海ゴミ熱分解処理装置
回収してもリサイクルできない廃プラに対しては、処分する段階で発電等の熱源に利用するサーマルリカバリーや、二次資源化する技術が開発されています。助成金で開発された技術は、熱分解による廃プラ処理プラントの試作開発です。
従来の焼却炉では処理できない金属・ガラス混合プラスチックや海洋ゴミにも対応でき、海岸漂着ゴミの処理に苦慮する自治体の課題解決や環境保護に大きく貢献することが期待されています。
畝間自動除草ロボットの実用化
日本の農業は、深刻な高齢化と人材不足に直面しています。
今回助成を受けた自動除草ロボットは、幅20cmまで変形可能な機体と90度の方向転換機構を備え、狭い畝間でも効率的な除草作業が可能となりました。自己位置推定システムにより完全自動化を実現し、さまざまな畝形状に対応できる調整機構と各種アタッチメントを備えています。
農業の生産性向上とともに、クリーンエネルギーを活用したスマート農業への転換も促進することが期待されています。
まとめ
市村清新技術財団による新技術開発助成は、実用化段階にある独創的な新技術開発を支援する制度です。資本金3億円以下または従業員300名以下の非上場企業が対象で、試作費合計額の4/5以下(上限2400万円)が助成されます。申請にはWeb登録と書類提出の両方が必要です。
社会的課題やニーズに対応する技術開発は、すべての国民の生活に関わる重要な項目です。支援事業を上手に活用し、持続可能な社会に必要な技術開発を進めていきましょう。