中小企業新事業進出補助金を申請するための要件はいくつかありますが、その中には賃上げに関する要件も含まれます。目標を達成できなかった場合、交付された補助金の返還を求められる可能性もあります。
第4回公募では、賃上げに関する新たな要件が追加されているため、申請を検討している場合はしっかり確認が必要です。本記事では、中小企業新事業進出補助金の賃上げに関する3つの要件と、未達の場合の返還義務について解説します。
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この記事の目次
中小企業新事業進出補助金とは?
中小企業新事業進出補助金は、中小企業等が新たな事業を始める際に発生する経費等を支援する補助金です。2026年3月27日(金)~2026年6月19日まで、第3回公募が実施されています。
本補助金は、中小企業等が事業規模を拡大することにより生産性が向上し、賃上げにつなげていくことを目的としています。そのため、従業員の給与水準を上げる賃上げは、申請者が達成すべき要件として位置づけられています。
詳しい補助額やスケジュールについては、詳細を解説した以下の記事でご確認ください。
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中小企業新事業進出補助金【2026年】詳細と要件・公募スケジュールを解説
第4回公募からの変更点
第4回公募以降、賃上げ要件の以下の点が変更されています。
地域別最低賃金引上げ特例が新設
新事業進出補助金では、新たに「地域別最低賃金引上げ特例」が設けられ、一定の条件を満たす場合に補助率が引き上げられるようになりました。
| 変更前 | 補助率は一律1/2 |
|---|---|
| 変更後 | 地域別最低賃金引上げ特例を適用する場合、補助率が2/3に引き上げ |
賃上げ特例要件の適用期間が変わった
補助上限額の上乗せを受けるための賃上げ特例要件について、達成すべき期間が変更されました。
| 変更前 | 補助事業実施期間内に達成 |
|---|---|
| 変更後 | 補助事業終了後3〜5年の事業計画期間内に達成 |
賃上げ要件の内容が大幅に変更
賃上げ要件は第3回公募では「最低賃金の年平均成長率」または「給与支給総額」のどちらかを満たす方式でしたが、第4回公募では「給与支給総額の年平均成長率」に一本化されています。
| 第3回 | ①都道府県別最低賃金の年平均成長率以上、または②給与支給総額2.5%以上 |
|---|---|
| 第4回 | 一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上 |
中小企業新事業進出補助金の賃上げに関する4つの要件
中小企業新事業進出補助金では、賃上げに関する要件が4つ定められています。詳しい内容は、以下のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①賃上げ要件 | 補助事業終了後3~5年の事業計画期間で、一定の水準の賃上げをすること |
| ②事業場内最賃水準要件 | 補助事業終了後3~5年の事業計画期間で、毎年、事業所内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準であること |
| ③賃上げ特例要件 (賃上げ特例の適用を受ける場合) | ①、②に加え、補助事業実施期間内に、給与支給総額を年平均6.0%以上増加、かつ事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げること |
| ④地域別最低賃金引上げ特例要件 (補助率の引き上げを受ける場合) | 2024年10月から2025年9月までの各月において、補助事業の主たる実施場所で雇用している従業員のうち、事業実施都道府県の地域別最低賃金以上、かつ2025年度改定後の地域別最低賃金未満の賃金水準で雇用されている従業員の割合が30%以上となる月が3カ月以上あること |
「①賃上げ要件」「②事業場内最賃水準要件」の2つは、申請時に満たすべき要件として取り組む必要があります。「③賃上げ特例要件」「④地域別最低賃金引上げ特例要件」に関しては、賃上げ特例を適用し、補助率や補助上限額を上乗せしたい場合に取り組む要件です。
いずれも達成できなかった場合、交付された補助金の返還義務があるため、ご自身の事業で達成可能な計画を立てることが大切です。本記事では、それぞれの要件の内容を詳しく解説します。
①賃上げ要件
賃上げ要件では、以下の要件を満たす必要があります。
補助事業終了後3~5年の事業計画期間で、給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させることが求められます。一例として、給与支給総額が1,000万円の事業者が、3年の事業計画を立てる場合のシミュレーションは以下のとおりです。
| 事業計画年度 | 給与支給総額(1円未満切り捨て) |
|---|---|
| 1年目 | 10,350,000円 |
| 2年目 | 10,712,250円 |
| 3年目 | 11,087,178円 |
3年目には、給与支給総額を11,087,178円まで引き上げる計算となります。
なお、全く同じ事業計画を立てたとしても、必ず採択されるとは限りません。シミュレーションの一例としてご覧ください。
なお、本要件での給与支給総額と一人当たり給与支給総額の定義は、以下のとおりです。
・一人当たり給与支給総額…給与支給総額を従業員数で割ったもの
従業員に対して事前に表明が必要
賃上げ要件では、応募申請時までに、一人当たり給与支給総額を基準値以上に設定し、全ての従業員又は従業員代表者に賃上げの表明をする必要があります。
申請後、採択が決定したら補助事業を行い、補助事業が終了した年度の給与水準を「基準年度」として、事業計画の最終年度で年平均成長率を3.5%以上増加の目標値を達成することが必要です。
一時的に給与水準を下げて達成は認められない
本補助金の申請後に、故意又は重過失により一時的に給与水準を下げ、その後増加させて本要件を達成することは認められません。
一例として以下のように、給与支給総額が1,000万円の企業が、②の給与支給総額の年平均成長率2.5%増加を達成するため、故意(又は重過失)により一時的に給与水準を下げて達成しようとするケースです。
【認められないケース】
| 年度 | 給与支給総額(1円未満切り捨て) |
|---|---|
| 申請時 | 10,000,000円 |
| 申請後(基準年度) | 9,300,000円(7%引き下げ) |
| 事業計画1年目 | 9,532,500円(2.5%増加) |
| 事業計画2年目 | 9,770,812円(2.5%増加) |
| 事業計画3年目 | 10,015,082円(2.5%増加) |
上記の場合、「給与支給総額の年平均成長率2.5%増加」は満たしていますが、申請後に7%引き下げているため、達成したことにはなりません。申請後の給与水準は変えず、一人当たり給与支給総額及び給与支給総額を、目標値以上に引き上げる計画を立てる必要があります。
②事業場内最賃水準要件
事業場内最賃水準要件では、補助事業終了後3~5年の事業計画期間で、毎年、事業所内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準であることが求められます。あらかじめ事業を実施する都道府県の最低賃金を確認し、事業所内最低賃金と比較しておくことが大切です。
地域別最低賃金の全国一覧は、厚生労働省が毎年公表しています。
参考:厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
なお、月給制で賃金を支払っている事業所の場合、賃金額を1ヶ月の所定労働時間で割り算すると、1時間あたりの賃金額を算定できます。
③賃上げ特例要件
賃上げ特例要件は、補助上限額を上乗せしたい場合に達成する要件です。具体的には、先ほど解説した「賃上げ要件」に加え、以下の①及び②両方の要件を満たす必要があります。
| ①補助事業終了後3~5年の事業計画期間で、給与支給総額を年平均6.0%(基本の3.5%+2.5%)以上増加させること ②事業場内最賃水準要件の事業場内最低賃金基準値に加え、さらに+20円(30円+20円=50円)以上増加させること |
給与支給総額は年平均で6.0%以上、事業場内最低賃金は年額で50円以上引き上げる必要があり、賃上げに関する他の要件に比べると厳しめに設定されています。応募後に一時的に給与を下げ、その後増加させて本要件を達成することは認められません。
④地域別最低賃金引上げ特例要件
以下の地域別最低賃金引上げ特例要件を満たすと、補助率が1/2から2/3に引き上げられます。
| 2024年10月から2025年9月までの各月において、補助事業の主たる実施場所で雇用している従業員のうち、事業実施都道府県の地域別最低賃金以上、かつ2025年度改定後の地域別最低賃金未満の賃金水準で雇用されている従業員の割合が30%以上となる月が3カ月以上あること |
本特例を適用する場合、②の「事業場内最賃水準要件」の要件を満たす必要はなくなります。
要件未達の場合の補助金返還義務について
賃上げに関する要件を達成できなかった場合、どの要件でも交付された補助金の返還義務が発生します。各要件ごとの返還要件は、以下のとおりです。
| 要件の種類 | 返還要件 | 返還額 |
|---|---|---|
| 賃上げ要件 | 従業員等に対して設定した目標値の表明がされていなかった場合 | 補助金全額返還 (交付決定取り消し) |
| 2つとも目標値を達成できなかった場合 | 補助金交付額に、達成度合いの高い方の目標値の未達成率を乗じた額 | |
| 事業場内最賃水準要件 | 地域別最低賃金より30円以上高い水準になっていなかった場合 | 補助金交付額を事業計画期間の年数で除した額 |
| 賃上げ特例要件 | ①、②のいずれか一方でも要件を達成できなかった場合 | 賃上げ特例の適用による補助上限額引上げ分の額 |
要件に応じて返還額が異なりますが、賃上げ要件で従業員等に目標値の表明がされていなかった場合に限っては、交付決定取り消しとなり全額返還が必要です。従業員等に表明した上で、賃上げ要件の目標値を2つとも達成できなかった場合、補助金交付額に、達成度合いの高い方の目標値の未達成率を乗じた額の返還となります。
一例として、補助金交付額が1,000万円の事業者が、目標値2.5%の給与支給総額の年平均成長率を2%しか達成できなかった場合、返還額の計算方法は以下のとおりです。
| 1,000万×(1-(2.0%÷2.5%))=200万 |
上記の例の場合は、200万円の返還が必要となります。
なお、賃上げ要件と事業場内最賃水準要件に関しては、未達の理由が天災等事業者の責めに負わない理由があれば、一部返還を求められない可能性があります。ただし、賃上げ特例要件の場合、未達であれば理由を問わず引上げ分の補助金交付額の返還が必要です。
まとめ
中小企業新事業進出補助金の賃上げに関する要件は、それぞれ内容が異なるため、違いをしっかり押さえておくことが大切です。賃上げは人材の確保や生産性向上につながる一方で、固定費の圧迫要因にもなるため、慎重に判断したいテーマでもあります。
要件を満たすには計画的な取り組みが求められますが、その分しっかりとした準備ができれば、事業の成長と人材確保の両面で大きな効果が期待できます。本補助金の活用を検討している方は、ぜひ制度内容を確認の上、前向きにご検討ください。
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