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給付付き税額控除をわかりやすく解説!いつからはじまる?

公開日:2025/9/19 更新日:2026/5/21
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給付付き税額控除とは、所得税の控除と現金給付を組み合わせた制度です。
所得が高い人は「減税」、所得が低い人や非課税世帯には「現金給付」として受け取れるため、幅広い層への支援が可能です。

2026年5月20日に政府が示した「議論の整理」では、導入時には税額控除(減税)と組み合わせず、所得に応じた“給付”に一本化する方向が示され、各党の認識もおおむね一致しました(※決定ではなく、反対意見も残ります)。

つまり「税額控除」という名前でありながら、当面は現金給付が中心になる見通しです。将来的に税額控除と組み合わせる可能性は残されており、支援の対象は「中低所得の勤労世代」、判定は「個人単位」とする方向で議論が進んでいます。

本記事では、制度の仕組み・給付額の目安・対象者・申請方法・導入スケジュール・消費税ゼロとの関係・諸外国の事例までをわかりやすく解説します。

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この記事の目次

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給付付き税額控除とは

給付付き税額控除は、税額控除と現金給付を組み合わせる仕組みです。

【重要】給付付き税額控除は、2026年5月時点で制度として正式に整備されていません。
ここで説明しているのは制度の基本的な考え方(仕組みの原型)です。2026年5月の「議論の整理」では、実際の導入時は税額控除と組み合わせず給付に一本化する方向が示されています(詳しくは後述)。なお、給付に一本化しても法律上は「給付付き税額控除」に含まれると整理されています。

・所得が高い人は、支払う税金から控除額が差し引かれ、納税負担が軽くなります。
・一方、所得が低い人は、税額控除だけでは控除しきれない分を現金で受け取れるため、より手厚い支援となります。

例えば、控除額を10万円とした場合を考えてみましょう。
給付付き税額控除の仕組みを示した図

・所得税が50万円の人なら、10万円分が差し引かれて40万円の納税になります。
・所得税が8万円の人であれば、まず8万円がゼロになり、差額の2万円が現金で支給されます。
・そもそも所得税を納めていない非課税世帯の場合は、10万円がそのまま給付されます。

このように、所得の水準によって「控除」と「給付」の割合が変わり、低所得層ほど現金給付が厚くなるのが特徴です。幅広い層を対象にしつつ、家計の苦しい層を重点的に支援できる仕組みといえます。

定額減税との違い

2024年に実施された定額減税は、控除しきれなかった分は給付されませんでした。
そのため、もともと所得税を納めていない非課税世帯は恩恵を受けにくいという課題がありました。

給付付き税額控除は、控除しきれない分を「現金で給付」する点が最大の違いです。
所得税がゼロの非課税世帯でも、控除額の全額が現金で受け取れる仕組みです。

定額減税補足給付金(不足額給付)だれが支給される?申請しないともらえない?

従来の現金給付との違い

これまでの現金給付は、住民税非課税世帯への一時的な支援が中心でした。対象が限られるため、課税ラインのすぐ上にいる「ギリギリ課税世帯」は支援を受けられないという不公平感がありました。

給付付き税額控除は所得に応じて支援額が連動する仕組みのため、所得の断絶がなくなめらかに支援が届く点が大きな違いです。また、一時的な補正予算ではなく恒久制度として設計される見通しで、毎年安定して支援を受け取れるようになります。

いくらもらえる?給付額の目安と世帯別シミュレーション

報道では「1人あたり4万円」を目安とする案が取り上げられています。これは食料品にかかる消費税の年間負担額(1人あたり約4万円)をもとにした議論上の目安です。

ただし、2026年5月20日の「議論の整理」では具体的な金額は示されていません。支援額は今後、純負担率の国際比較を参照しつつ、恒久財源を確保できる範囲で設定される見通しで、確定した数字ではない点にご注意ください。

ケース別シミュレーション(4万円案の場合)

4万円案の場合のシミュレーション
所得税が10万円の方4万円が「減税」。残り6万円を納税。
所得税が3万円の方3万円が「減税」でゼロに。差額1万円が現金給付。
所得税が非課税の方4万円が全額現金給付。

制度は個人単位で判定される見込みのため、世帯人数に応じて給付総額が変わります。

世帯人数別の試算

世帯構成世帯全体の給付額(4万円案)
単身世帯4万円
夫婦のみ世帯8万円
夫婦+子ども1人12万円
夫婦+子ども2人(4人家族)16万円
夫婦+子ども3人(5人家族)20万円

4人家族であれば最大16万円の恩恵を受けられる計算となります。ただし、逓減・消失のしくみ(高所得層で段階的に支援が減る)が議論されており、高所得世帯は実際の給付額がこれより少なくなる可能性があります。

給付付き税額控除の対象者は誰?

給付付き税額控除は、所得制限なしで幅広い所得層を対象とする制度として議論されています。対象者の具体像は以下のとおりです。

会社員・パート・アルバイト

これまでは給与所得者は全員が対象となる方向で議論されていましたが、2026年5月20日現在、「一定の勤労収入があり、社会保険料を負担している中低所得層」が対象の軸として議論されています。対象の下限は、社会保険に加入する年収(給与106万円超)や、給与所得が0円超になる74万円超などが目安に挙がっていますが、確定していません。

これより収入が低いパート・アルバイトの方が含まれるかどうかは、下限ラインとあわせて検討中です。

自営業者・フリーランス

事業所得がある自営業者・フリーランスも対象です。確定申告の情報をもとに支援額が算定されます。青色申告・白色申告に関わらず対象となる方向で議論されています。

年金受給者

年金受給者が一律に対象となるわけではありません。高齢者は年齢で一律に判断せず、働いていて税・社会保険料の負担が年金受取を上回る(純負担がプラスの)中低所得層を、現役と同様に対象とすることも考えられる、という整理にとどまっています。

働いていない年金受給者を含めるかどうかは、明確な方針が示されていません。

関連記事:

年金生活者支援給付金とは?対象者と受給方法を解説

専業主婦(夫)・無職の方

所得のない専業主婦(夫)や無職の方についても、個人単位で判定されるため、給付対象となる可能性が高いとされています。ただし、配偶者が高所得者の場合の公平性については、国民会議で論点となっています。

有識者会議が示した「改善が必要」な層

2026年3月24日の有識者会議初会合では、子ども2人の35歳共働き世帯で、年収が平均年収(540万円)を下回る場合の純負担率が米英独仏の平均より高いことが示されました。有識者からは「改善が必要」との意見が出ており、中低所得の子育て世代が最も重点的に支援される層となる見込みです。

非課税世帯はどうなる?

給付付き税額控除の最大の特徴は、住民税非課税世帯も全額現金給付で恩恵を受けられる点です。

所得税を納めていない非課税世帯の場合、定額減税では減税の恩恵を受けられず、別途一時的な現金給付(1世帯3万円など)で対応する必要がありました。給付付き税額控除では、控除額に相当する金額がそのまま現金として給付されるため、非課税世帯も課税世帯と同水準の支援を受けられます。

なお、令和7年度の非課税世帯向け給付金(1世帯3万円)は既に多くの自治体で支給が完了しています。令和8年度以降の支援については、給付付き税額控除への移行を視野に議論が進められています。

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住民税非課税世帯とは?条件・年収目安・受けられる支援を解説!

申請方法と受け取り方

申請方法はまだ確定していませんが、国民会議では「プッシュ型」の給付を目指す方針が示されています。プッシュ型とは、住民が申請しなくても自治体や国が把握する情報をもとに対象者に通知を送り、給付する方式です。

3つの執行イメージ

政府は以下3つの執行方式を検討しています。

執行イメージ特徴課題
①雇用主型雇用主が年末調整で税額控除を適用し、残余を公的機関が給付副業収入や世帯所得を勘案できない。雇用主の事務負担が発生
②確定申告型確定申告・賦課決定時に税額控除を適用し、残余を給付税額控除と給付に分けるため事務が煩雑
③給付のみ型申告情報に基づき公的機関が給付のみを実施「給付付き税額控除」の名称と実態が異なる

2026年5月20日の実務者会議では、事務の効率化の観点から、税額控除と給付を組み合わせず「所得に応じた給付」へ一本化する方向が「議論の整理」として示され、各党の認識がおおむね一致しました(※決定ではなく、反対意見も残ります)。

あわせて、雇用主が年末調整で担う①の方式は、中小企業や複数の勤務先がある人への対応が難しいことから、実現は困難との見方が示されています。実施主体は「国か地方かの二者択一ではなく、国と地方が協力して担う」方向で検討が進んでいます。

マイナンバーと公金受取口座の活用

プッシュ型給付を実現するには、マイナンバーカードと公金受取口座の連携が鍵となります。ただし、2026年4月時点で公金受取口座の登録率は約5割にとどまっており、未登録者の振込先情報をどう収集するかが論点となっています。

公金受取口座を登録していない方は、給付を受け取る際に口座情報の登録や確認書の返送が必要になる可能性があります。今後の制度設計を注視しましょう。

2万円給付金の受け取り時期に差?マイナンバーカードにひもづく公金受取口座とは

いつから始まる?導入スケジュールの見通し

2026年2月26日に第1回「社会保障国民会議」が開催され、制度設計の議論がスタートしました。その後、実務者会議や有識者会議が相次いで設置され、議論が本格化しています。

高市首相は「夏前に中間取りまとめを行い、税制改正関連法案の早期提出を目指す」と表明しています。

現時点での見通しは以下のとおりです。

給付付き税額控除の導入スケジュール(見通し)
2026年6月ごろ国民会議が中間取りまとめ → 骨太の方針に反映
2026年秋臨時国会への法案提出を目指す
2026年末具体案の策定を目指す
2027年以降本格導入(システム構築等に時間を要する見込み)

2026年5月20日には「議論の整理」が示され、給付に一本化・個人単位・中低所得の勤労世代を対象とする方向で、与党を中心に認識がおおむねそろってきました。

ただし野党には「まだ一致の段階ではない」との慎重な声もあり、6月の中間取りまとめに向けてさらに協議が続きます。

財源5兆円はどう確保する?

給付付き税額控除を1人あたり4万円で恒久的に実施する場合、年間約5兆円規模の財源が必要と試算されています(1億2,500万人×4万円)。

財源確保の方向性としては、以下のような選択肢が議論されています。

  • 補助金・租税特別措置の見直しによる歳出改革
  • 税外収入(国有財産の売却益・特別会計の剰余金等)の活用
  • 基金の取り崩し
  • 所得税の最高税率引き上げなど税制改正

高市首相は、特例公債(赤字国債)に頼らない方針を示していますが、5兆円という規模の財源を安定的に確保できるかは依然として大きな論点です。国民会議の中間取りまとめでどのような方向性が示されるかが注目されます。

消費税2年間ゼロとの関係は

高市首相は、給付付き税額控除と食料品消費税ゼロを「2段階の支援策」として位置づけています。

短期策:食料品の消費税を2年間ゼロ(制度導入までのつなぎ)
中長期策:給付付き税額控除の恒久制度化

2月9日(衆院選翌日)の記者会見で、高市首相は消費税ゼロについて「給付付き税額控除導入までのつなぎ」と明言しました。
2月18日の第2次内閣発足の記者会見では、両政策を「同時並行で議論する」と表明しています。

消費税ゼロについては、期間を2年間に限定した上で、特例公債(赤字国債)に頼らず、補助金・租税特別措置の見直しや税外収入で財源を確保する方針です。ただし年間約5兆円とされる財源の確保は依然として課題とされています。

なお、3月18日の実務者会議(第2回)では小売業団体からヒアリングが行われ、システム改修負担や実務上の課題について意見が示されました。

関連記事:

【2026年最新】食料品の消費税ゼロはいつから?2年間限定案・各党案を徹底解説

給付付き税額控除のデメリット・課題

制度の方向性は固まりつつありますが、実現には課題も多く残っています。2026年5月20日の「議論の整理」をもとに、主な論点を短く整理します。

①年5兆円の財源を確保できるか

1人4万円を恒久制度にすると年約5兆円が必要とされます。政府は赤字国債に頼らない方針ですが、これだけの財源を安定的に確保できるかが最大の論点です。

②「給付のみ」で名前と中身がズレる

事務を簡単にするため、税額控除を使わず給付に一本化する方向です。「税額控除」という名前なのに給付だけになるため、当面の措置か恒久かもまだ決まっていません。

③所得を正確に把握できるか

会社員の多くは年末調整で課税が完結するため、国は個人ごとの所得を把握しきれていません。把握が甘いと、誤って給付してしまうリスクがあります。

④誰が給付事務を担うのか

国か地方かは未決定で、「国と地方が協力する」方向です。雇用主に任せる案は、中小企業や掛け持ち勤務で対応が難しく、見送られる見通しです。

⑤本当に困っている人が漏れないか

対象は「働いていて社会保険料を払う中低所得層」が軸です。フリーランス・非正規・低年金の高齢者・生活保護から漏れた人などが、すき間に落ちないかが懸念されています。

⑥働く高齢者を対象にするか

高齢者を含めるかは方針が定まっていません。年齢で一律に決めず、働いて負担が重い高齢者は対象に、という整理にとどまっています。

⑦子育て世帯を優遇するか

こどもの数に応じた加算を求める声と、「児童手当など既存制度で足りる」という慎重論が並んでいます。個人単位という制度の趣旨との兼ね合いも論点です。

⑧いつ始まるか読みにくい

システム整備に2〜3年、理想形なら4年以上かかる見通しです。財源・所得把握・体制の課題が残り、本格導入は早くても2027年度以降とみられます。

諸外国の給付付き税額控除(アメリカ・イギリス・フランス・カナダ)

給付付き税額控除(Refundable Tax Credit)は、米国・英国・フランス・カナダなど多くの先進国で導入されている制度です。3月24日の有識者会議初会合では、これらの国の事例が紹介され、日本への適用に向けた論点整理が始まっています。

4か国の制度比較

制度名導入支援単位
アメリカ勤労所得税額控除(EITC)/児童税額控除(CTC)1975年/1997年夫婦単位(選択制)
イギリスユニバーサル・クレジット2013年(旧制度1999年〜)夫婦単位
フランス活動手当(Prime d'activité)2016年夫婦単位(N分N乗方式)
カナダ勤労者手当(Canada Workers Benefit)2007年夫婦単位

アメリカEITCに学ぶ「誤支給」のリスク

アメリカの勤労所得税額控除(EITC)は世界で最も有名な給付付き税額控除のひとつですが、誤支給割合が約32.7%(約211億ドル)と報告されています。

主な過誤・不正の原因は以下のとおりです。

  • 子ども等の被扶養者の適格要件の誤り(約53%)
  • 所得金額の過小・過大申告(約50%)
  • 申告資格(単身・夫婦合算等)の誤り(約12%)

アメリカは原則として全員が確定申告を行う仕組みで、自己申告ベースのため誤支給が生じやすいとされています。日本の制度設計では、マイナンバーによる所得捕捉の精度を高めつつ、誤支給を防ぐ仕組みをどう組み込むかが重要な論点となります。

イギリスの制度変遷から学ぶ教訓

イギリスは1999年に勤労世帯税額控除を導入しましたが、雇用主を介した給付はコンプライアンスコストが重いとの判断から、2006年に全額給付方式へ移行しました。その後、2013年には複数の給付措置を統合して「ユニバーサル・クレジット」へと制度を簡素化しています。

フランスも同様に、2001年に就業のための手当(PPE)を給付付き税額控除として導入した後、積極的連帯手当(RSA)との重複や利便性の課題から、2016年に給付方式の「活動手当(Prime d'activité)」へ一本化しました。

日本の制度設計においても、「雇用主の事務負担を抑えつつ、非課税世帯まで届く制度」としてどう組み立てるかが最大の論点となっています。

給付付き税額控除はベーシックインカムなのか?

給付付き税額控除の議論が注目されるにつれ、「これはベーシックインカムの一種ではないか?」という声もSNSなどで見られます。両者は「現金を給付する」点で似ていますが、制度の性格は大きく異なります。

ベーシックインカムとは

ベーシックインカム(Basic Income, BI)とは、すべての国民に対し、所得や就労状況に関わらず、定期的に一律の現金を支給する制度構想です。無条件・個人単位・定額・定期的、という4つの特徴があり、生活保障の最低ラインを全員に保障することを目的としています。

日本では正式に導入された事例はありませんが、海外ではフィンランドやカナダ(一部州)などで社会実験が行われた例があります。

給付付き税額控除とベーシックインカムの違い

両制度の違いを整理すると以下のようになります。

比較項目給付付き税額控除ベーシックインカム
対象者所得に応じて支援額が変動全国民に一律
所得制限高所得者は逓減・消失の議論あり所得に関わらず支給
就労要件勤労性収入が要件となる議論あり要件なし
支給頻度年1回または段階的給付毎月など定期的
財源規模年間5兆円規模(1人4万円案)年間100兆円規模(1人月7万円案の場合)
既存制度との関係税・社会保障制度に組み込む既存制度の多くを統合・廃止する構想

「部分的ベーシックインカム」という見方

給付付き税額控除は、低所得層に厚く支給される点でベーシックインカムと共通の思想を持ちますが、高所得者ほど支援が薄くなる「負の所得税」に近い仕組みです。経済学者ミルトン・フリードマンが1960年代に提唱した「負の所得税(Negative Income Tax)」がこの制度の理論的背景にあるとされています。

有識者の中には、給付付き税額控除を「部分的ベーシックインカム」「就労インセンティブ付きベーシックインカム」と位置づける意見もあります。ただし、日本で議論されている給付付き税額控除は、全国民への無条件給付ではなく、勤労性収入の有無や金額に応じた逓増・逓減が想定されており、純粋なベーシックインカムとは異なります。

なぜ日本ではベーシックインカムではなく給付付き税額控除なのか

ベーシックインカムは理念としては魅力的ですが、実現にはいくつかの大きな課題があります。

  • 全国民に月7万円を支給する場合、年間約100兆円規模の財源が必要(現在の国家予算と同程度)
  • 就労インセンティブの低下が懸念される
  • 既存の社会保障制度(年金・生活保護・児童手当等)との整理が必要
  • 世界的にも本格導入した国はまだない

これに対し、給付付き税額控除は既存の税制・社会保障制度を活かしながら、中低所得層に重点的に支援を届ける制度として、現実的な選択肢と位置づけられています。財源規模も年間5兆円程度と、ベーシックインカムに比べて実現可能性が高いとされます。

国民会議では、ベーシックインカム的な発想も踏まえつつ、日本の財政状況や既存制度との整合性を考慮した現実解として、給付付き税額控除の制度設計が進められています。

3つの執行イメージと実施主体の論点

制度の執行を誰が担うかは、給付のスピードと事務負担に直結する重要なテーマです。

国・市町村・雇用主の役割分担

支援に必要な情報は、それぞれ以下のように分散して保有されています。

機関保有情報
市町村住民・世帯情報(住民基本台帳)、住民税課税情報、地域保険の保険料賦課情報
国(税務当局)所得税の課税情報(申告納税制度)
雇用主自社が支払った給与の課税情報・保険料賦課情報(被用者保険)

所得税は原則として申告納税制度であるため、源泉徴収・年末調整で課税関係が完了している会社員の多くについて、国は個人に紐づいた所得情報を保有していません。一方、住民税は賦課課税制度のため、原則として市町村がすべての住民の所得情報を把握しています。

このため、給付付き税額控除の対象者特定には、住民税賦課情報の活用が有力とされています。ただし、住民税非課税ライン以下の所得しかなく申告情報がない方については、別途把握の仕組みが必要です。

過去の事務負担の教訓

2024年の定額減税・給付金一体措置では、自治体で大変な事務負担が発生しました。当初調整給付と不足額給付の2段階支給、所得税と住民税の組み合わせなど、事務が複雑だったことが指摘されています。

国民会議では、過去の教訓を踏まえ、以下の方針が議論されています。

  • わかりやすくシンプルな制度設計にする
  • 実施主体の事務負担を十分考慮する
  • 地方の財政基盤に配慮する
  • 国と地方の間で丁寧な対話・協議を行う

個人単位か世帯単位か

給付付き税額控除の給付単位について、2026年5月13日の実務者会議で、原則として世帯単位ではなく個人単位で支援する方向でおおむね一致しました。その理由は以下のとおりです。

  • マイナンバーによる所得捕捉は個人単位でしやすい
  • 制度の簡素化の観点から個人単位が適切
  • 世帯単位とする場合は世帯合算の事務が発生する

ただし、配偶者が高所得者の場合の公平性や、支援額を逓減させる際の考え方など、世帯単位の視点も必要との意見は引き続き出ており、世帯の状況も加味する設計を求める声もあります。
最終的な制度設計は継続議論となっており、中長期的には金融所得や資産を勘案できる段階的な精緻化が目指されます。

給付付き税額控除の議論が再び注目されている背景

物価高が長期化する中で、家計への影響をどう抑えるかが引き続き政策課題となっています。政府はこれまで、一時的な現金給付や各種支援策を講じてきましたが、その都度対応する方式には限界があるとの指摘も出ています。

こうした中、税制と給付を組み合わせた恒常的な支援の在り方として、給付付き税額控除が改めて議論の対象となっています。給付付き税額控除は、所得税の控除だけでなく、控除しきれない分を現金で給付する仕組みで、所得の低い世帯ほど支援が厚くなる点が特徴です。

2025年9月には、当時与党だった自民党・公明党と立憲民主党による3党党首会談が行われ、給付付き税額控除の制度設計について、政策責任者を中心に協議を進める枠組みを設けることで一致しました。その後も、幹事長レベルや実務レベルでの意見交換が続いています。

また、政府・与党内では、与党だけでなく野党も参加する形で、制度の公平性や財源の在り方を議論する必要があるとして、国民会議など幅広い協議の場を設ける構想も示されています。

なお、選挙後の特別国会は2月18日に召集され、高市早苗首相が第2次内閣を発足させました。同日夜の記者会見で首相は、給付付き税額控除と食料品消費税ゼロを「同時並行で議論する」と改めて表明しています。

衆院選後から国民会議始動までの動き

衆議院選挙後の会見で高市首相は、家計支援策について、給付と減税のどちらか一方に偏るのではなく、複数の選択肢を視野に入れて検討する必要があるとの考えを示しました。

また、衆院予算委員会では、将来的には申請を待たずに支援を届ける「プッシュ型」の給付を目指す考えも示しており、より使いやすい制度設計を目指す姿勢が明らかになっています。

主な動き(2026年2月~5月)

■ 2月8日(選挙結果)
第51回衆院選で自民党が316議席(戦後最多・単独で3分の2超)を獲得。維新と合わせた与党は352議席となり、高市首相の政策推進力が大幅に強化されました。

■ 2月9日(選挙翌日・記者会見)
高市首相が自民党本部で記者会見。食料品消費税ゼロについて「給付付き税額控除の導入までのつなぎ」と位置づけ、国民会議で夏前に中間取りまとめを行う方針を表明しました。

■ 2月18日(第2次高市内閣発足・記者会見)
特別国会で高市首相が第105代首相に選出され、第2次内閣が発足。夜の記者会見で、給付付き税額控除と消費税ゼロを「同時並行で議論する」と改めて表明。また、衆院予算委員会では「最終的に申請を待たずに支援するプッシュ型を目指す」とも述べています。

■ 2月26日(第1回国民会議)
超党派の「第1回 社会保障国民会議」が開催され、制度設計の議論が本格的に始まりました。

■ 3月12日(実務者会議 第1回)
「給付付き税額控除等に関する実務者会議」の初会合が開催されました。政府と自民党、日本維新の会、チームみらい、国民民主党が参加。諸外国の事例などの基本的な知見を確認し、今後の進め方を議論しました。

■ 3月18日(実務者会議 第2回)
実務者会議の第2回が開催され、食料品消費税ゼロに関するヒアリングとして、小売業団体からシステム改修負担などの意見が示されました。なお、この回から立憲民主党、公明党、中道も参加しています。

■ 3月24日(有識者会議 初会合)
国民会議の下に設置された有識者会議(座長:清家篤・慶応義塾大学元塾長、メンバー12名)の初会合が開催されました。米国・英国・フランス・カナダの給付付き税額控除の事例が紹介され、日本総研の翁百合氏や大和総研の是枝俊悟氏から課題が提示されました。城内実経済財政相は「中低所得者の負担を集中的に軽減し、所得に応じて手取りが増えるようにする」と述べています。

■ 4月6日(実務者会議 第4回)
有識者会議による純負担率の分析結果を踏まえた議論が行われました。子ども2人の35歳共働き世帯で年収が平均年収を下回る場合、欧米主要国より純負担率が高いことが示され、改善の方向性が検討されました。

■ 4月8日(実務者会議 第5回)
実務者会議の第5回が開催され、制度設計の細部について議論が進められました。

■ 4月24日(実務者会議 第8回)
食料品消費税ゼロをテーマに専門家ヒアリングを実施。レジのシステム改修コストや財源などをめぐり意見が交わされました。

■ 5月13日(実務者会議・論点整理)
政府がこれまでの実務者会議・有識者会議の意見を踏まえた論点を提示。①現役の中低所得層の負担軽減と就労促進を制度の目的とする、②支援は個人単位とする、③所得に応じた給付への一本化を検討する——という方向でおおむね一致しました。一方で、負担の大きい中低所得の子育て世帯への配慮、恒久財源の確保、国と地方自治体の役割分担が今後の課題として挙げられています。

有識者会議では、子ども2人の35歳共働き世帯について、年収が平均年収(540万円)を下回る場合の純負担率が米英独仏の平均より高いことが示され、有識者からは「改善が必要」との意見が出ました。国民会議では6月ごろまでに中間取りまとめを行い、骨太の方針に反映させる予定です。

給付付き税額控除のよくある質問


給付付き税額控除はいつ始まるのですか?

現時点では導入時期は確定していません。2026年6月ごろの中間取りまとめを経て、秋の臨時国会への法案提出が目指されています。本格導入は早くても2027年度以降との見方が有力です。2月26日に第1回「社会保障国民会議」が開催され、3月には実務者会議・有識者会議も始動し、4月にも実務者会議が継続的に開催され議論が本格化しています。


飲食料品の消費税ゼロは本当に実施されるのですか?

飲食料品の消費税率を2年間に限りゼロとする案については、給付付き税額控除の導入までの間の負担軽減策として検討が進められています。3月18日の実務者会議では小売業団体からシステム改修負担などの実務面の課題が示されており、具体的な実施方法の議論が続いています。ただし、年間約5兆円の財源確保などの課題があり、正式決定には至っていません。


法案はいつ提出される予定ですか?

高市首相は「夏前に国民会議で中間取りまとめを行い、税制改正関連法案の早期提出を目指す」と述べています。2026年秋の臨時国会が有力視されていますが、確定時期は未定です。
参考:首相官邸 高市内閣総理大臣記者会見


給付付き税額控除はいくらもらえる?

金額はまだ確定していません。報道では「1人あたり4万円」が目安として取り上げられていますが、これは食料品の消費税の年間負担額(約4万円)をもとにした議論上の目安です。2026年5月20日の「議論の整理」では具体額は示されておらず、今後、財源を確保できる範囲で決まる見通しです。


誰が対象になる?

給付付き税額控除は所得制限なしで幅広い所得層が対象となる見込みです。年金受給者、会社員、パート・アルバイト、子育て世帯、フリーランス、遺族年金・障害年金受給者など、幅広い層が対象に含まれる方向で議論が進んでいます。また、個人単位での判定が検討されています。


非課税世帯でも受け取れる?

はい。給付付き税額控除の最大の特徴は、非課税世帯も全額現金給付で恩恵を受けられる点です。所得税を納めていない非課税世帯の場合は、控除額に相当する金額がそのまま現金として給付されます。これが、2024年の定額減税との大きな違いです。


年金受給者も対象になる?

一律には対象になりません。年齢で区切らず、働いていて負担が年金受取を上回る(純負担がプラスの)中低所得の高齢者を対象に含める方向で議論されています。働いていない年金受給者を含めるかは未定です。


専業主婦(夫)・無職でももらえる?

個人単位で判定される見込みのため、専業主婦(夫)や無職の方も対象となる可能性が高いとされています。所得がない方は、4万円案の場合は全額が現金給付されることになります。ただし、配偶者が高所得者の場合の扱いについては、公平性の観点から国民会議で継続議論となっています。


パート・アルバイトも対象になる?

はい、パート・アルバイトも対象となる見込みです。所得税の納税額に応じて、控除または現金給付という形で支援を受けられます。年収が低く所得税が非課税の方は、4万円案の場合は全額が現金給付される可能性があります。


申請は必要?

申請方法はまだ確定していません。高市首相は衆院予算委員会で「申請を待たずに支援するプッシュ型を目指す」と表明しており、マイナンバーカードの公金受取口座を登録している場合は自動給付される可能性があります。未登録の場合は確認書の返送やオンライン申請など、別途手続きが必要になる見込みです。


マイナンバーカードがなくても受け取れる?

マイナンバーカードがなくても受給自体はできる方向で議論が進められています。ただし、プッシュ型給付を受けるには公金受取口座の登録が前提となる可能性が高く、口座未登録の方は確認書の返送など追加の手続きが必要になる見込みです。スムーズな受給のためには、マイナンバーカードの取得と公金受取口座の登録が推奨されます。


財源5兆円はどう確保するの?

1人4万円で約1億2,500万人に給付する場合、年間約5兆円の財源が必要と試算されています。財源としては、補助金・租税特別措置の見直し、税外収入(国有財産の売却益等)の活用、基金の取り崩し、税制改正などが議論されています。高市首相は赤字国債に頼らない方針を示していますが、安定的な財源確保は引き続き最大の論点となっています。


国民会議とは何ですか?

社会保障国民会議は、政府や与野党のほか有識者や産業界などが参加し、給付付き税額控除や食料品消費税ゼロなどの重要政策を議論する超党派の会議体です。その下に、与野党の政策責任者が参加する「実務者会議」と、専門家12名で構成される「有識者会議」(座長:清家篤・慶応義塾大学元塾長)が設置されています。


給付付き税額控除は海外にもある制度ですか?

はい。給付付き税額控除(Refundable Tax Credit)は、米国の勤労所得税額控除(EITC)、英国のユニバーサル・クレジット、フランスの活動手当、カナダの勤労者手当など、多くの先進国で導入されています。各国で対象者や給付額の設計は異なりますが、低所得者への支援と就労促進を両立させる仕組みとして広く活用されています。一方で、米国EITCでは誤支給割合が32.7%と高く、日本の制度設計ではこれを教訓とした仕組みづくりが論点となっています。


給付付き税額控除はベーシックインカムと同じですか?

似ている部分もありますが、同じではありません。ベーシックインカムは全国民に所得や就労状況に関わらず一律の現金を支給する制度ですが、給付付き税額控除は所得に応じて支援額が変動し、高所得者では逓減・消失する仕組みです。経済学的には、ミルトン・フリードマンが提唱した「負の所得税」に近い制度で、「部分的ベーシックインカム」と位置づけられることもあります。財源規模もベーシックインカム(年間約100兆円規模)に対し、給付付き税額控除は年間5兆円規模と、より現実的な制度設計となっています。


定額減税や給付金との違いは何ですか?

2024年の定額減税は、控除しきれなかった分が給付されないため、非課税世帯は恩恵を受けにくいという課題がありました。また、従来の現金給付は非課税世帯など対象が限定的で、課税ラインのすぐ上にいる世帯は支援が届かないという不公平感がありました。給付付き税額控除は、所得に応じて控除と給付がなめらかに連動する仕組みで、幅広い所得層を恒常的に支援できる点が大きな違いです。



まとめ

給付付き税額控除は、税額控除と現金給付を組み合わせることで、低・中所得層への支援を手厚くする仕組みです。経済学的には「負の所得税」に近い制度で、部分的ベーシックインカムと位置づけられることもあります。
衆議院選挙後、国民会議・実務者会議・有識者会議の3つの場が出そろい、議論は本格的に進んでいます。6月ごろの中間取りまとめを経て、2026年秋の臨時国会への法案提出を目指す方針です。

給付額は1人4万円を基本とし、個人単位での判定が原則となる見込みです。非課税世帯も全額現金給付の対象となるほか、年金受給者・専業主婦(夫)・パート・アルバイト・自営業者など幅広い層が対象に含まれます。

一方で、所得や資産の把握、公平性、財源5兆円の確保、実施主体の事務負担など、課題は依然として大きく、制度の具体化には時間を要するとみられます。今後、国民会議などの場で、どのような議論が積み重ねられていくのかが注目されます。

【再掲:重要なお知らせ】
給付付き税額控除は、2026年5月時点で制度として正式に整備されていません。本記事の内容は議論中の情報を含むため、実際の制度内容・給付額・対象者・申請方法・導入時期等は今後の議論により変更される可能性があります。具体的な申請や受給判断の前に、必ず内閣官房・首相官邸・各省庁の公式情報をご確認ください。

出典:
自民党 衆院選の結果を受けて 高市早苗総裁会見
社会保障国民会議 給付付き税額控除等に関する実務者会議(第11回)

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